猫の一年 金井美恵子

猫の一年

猫の一年

ジュリーといえば今、読み終えるのが惜しいので、ゆっくりゆっくり舐めるように読んでいる大好きな金井美恵子さんのエッセイにも登場する。
日本で人気のある(あった)田村正和・ジュリー・木村拓哉にちっとも魅力を感じない、と金井さん。

阪妻の息子である田村正和は、莢の中で育ちが良くないくすんだ肌色で痩せたソラ豆のような顔といい、細身(スリム)な体というと聞こえがいいのだが、ソラ豆顔にとってさえ、バランスの悪い貧弱な体(しわがれて聞きとりにくい声も美声とはいい難い)スターである。
日本のテレビを中心にしてその支持者が女性たちと考えられている男性スターは、なぜか田村正和沢田研二だけでなく、系列(ラインとして木村拓哉)につらなるイモ系が好まれるのではあるまいか。 160頁

そもそも、沢田研二がジュリーと名のるのは、かつて何かで読んだのだったが、ジュリー・アンドリュースのファンでかつ尊敬していたからなのだそうで
157頁

田村正和→ソラ豆。確かに。 
金井さんの文章は慣れないと読みづらいので、途中で投げ出してしまう人もいるかも。もったいないなあ。こんなにおもしろいのに。

「結果を出す」という言葉をよくスポーツ選手などが使うけれど、この言葉にずっと違和感を持っていて、金井センセイのエッセイに「結果」でなく「成果」だ、書いてあり、そうだよね!とスッキリした。

家族の病人のためにいのちのスープを作りつづけてきたことから出発した家庭料理の研究の大切さを、いささか奇矯にさえ聞える毅然たる一徹さで、あたかも何かに対して怒っているかのような口調で使命のように語りつづける料理研究家辰巳芳子も―
205頁

この方が「食べるべきように食べなければならない」とか力説するたびになんとなく違和感というか、よーく聞いても結局意味が分からないわたしがバカなのか?と思っていた。

NHKきょうの料理 いのちを養う四季のスープ (NHK出版 DVD+BOOK)

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高野文子の「絶対安全剃刀」には、自分を小さな、大きなリボンを頭につけた女の子だと思っている認知症の老女が登場し、私はこれを大島弓子の、人間の女の子だと思っている猫の登場する「綿の国星」に対する批判として読んだものだったが、考えてみれば、「可愛いおばあさんになりたい」という言説への痛烈な皮肉として、高野文子のマンガは描かれたのだと考えるべきだろう。 205頁

わたしは「可愛いおばあさん」になれそうもないので、早く「枯れた爺さん」になりたいと思ってしまうのかもしれない。爺さんに憧れることにより、婆さんにしかなれない自分から逃げているのかも。

絶対安全剃刀―高野文子作品集

絶対安全剃刀―高野文子作品集

どこで読んだか金井さんで一番笑ったのが

デブの中学生がキャンプに行って戦争ごっこしてウルシにかぶれたって顔してる防衛庁長官

というような文章です。
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumidaijin/020930/14isiba.html